The Pop Group - Y

Y  1976年に英国で産声を上げたパンクロックの波は瞬く間に世間を騒がせ、そしてくすぶり続けていた若者をあらゆる意味で刺激した。しかしそのシーンは正に一瞬にして崩壊の道を辿ることになり、その姿勢だけは生き続けたもののサウンドとしての確立には至らなかった。しかしそれでも今年でパンク生誕から30年以上経過することになり、偉大なるムーヴメントだったと言うことが証明されているワケだな。そしてその波は多方面に波紋を及ぼし、新たなジャンルと手法をプレイヤー側にも提示したものだ。ニューウェイヴと呼ばれるものからノイズ・アヴァンギャルドの世界、そしてハードコアパンクなどなど攻撃性を持ったサウンド、革新的なサウンドはパンクにカテゴライズされてきた。そういう意味で少々損をしているのがザ・ポップ・グループというバンドだ。

 バンド名はポップ・グループだが、やってる音は超前衛的なサウンドでもありいわゆるパンクロックとかロックらしい音楽ではない。ただ、姿勢が間違いなくパンクであり彼等はロックの人間である。この辺がレコードだけを聴いて判断していかなければいけない海の向こうの世界の現実とのギャップなんだよな、日本ってのはさ。もちろんそれでも伝わるところが凄いんだけどさ。このバンドも得体の知れない部分が多かったし更に数年の活動のみだったということもあって完全に伝説扱いになっている。CDの方も全然再発されなかったのでプレミアものだったしね。ちょっと前に再発紙ジャケされたみたいだけど。

 音楽的に言えば…、カミソリのようなエッジの立ったギターサウンド、氷のように冷たくアバンギャルドなピアノ、非常にテクニカルで印象的な旋律を刻むベース、その他ノイズ。でも歌があるものについてはポップ・グループの名に恥じない聴きやすいメロディを持った歌だったりするんだな。一般的には決して受け入れられない音だし、音楽というものでもない。攻撃的な、刺激的なサウンド。ファーストは「Y」と言うもの。セカンド「ハウ・マッチ・ロンガー」はそれに更に輪をかけたサウンドの凶暴性を持った最高傑作。そして崩壊。

 しかし紙ジャケなくなったらまたこんなプレミアなのか、このCD…。やっぱマニア向けなんだな(笑)。

Mark Stewart - Edit

Edit  CD屋で情報通りの新作を確認しながら、当然同じように新作が陳列されているところを一通り眺めるのも楽しいものだ。意外なトコロで新作や再発ものが出ていたり、新たな発見というか出会い、いや、久々の出会いもあったり、また最近は昔の大物、っつうか昔の人が復活してアルバム出したりするのも多くて、懐かしい名前に出逢うことも多い。それもまたネット上では収集しきれない情報が店頭のコーナーでは一目瞭然で目に入ってくるのが嬉しい。やはり店頭の楽しみはそういうところにあるんだなぁと思う。そして今回出逢ったのはなんと、あのポップ・グループの主だった、既に伝説化されてしまっているマーク・スチュワートという人の新作ソロアルバム。なんと12年ぶりの新作っつうから驚いた。そんなに活動しないで生きていける人なのか?なんてね。もちろんローカルでライブ活動とかしてたりするんだろうけど。

 「Edit」、4月末にリリースされていたらしいけど全然知らなかった。普段からチェックしてる人じゃないからねぇ…。それでやっぱり気になったので聴いてみることに…。

 「変わってねぇ〜…」

 過去の音は抜きにして、この「Edit」だけを聴いたリスナーがいたとしたら、多分音に対する感性の強い人間は相当衝撃を受けると思う。普通にポップス系を聴いていたりヘタにロック的なものを聴いていたりすると受け付けない可能性が高いんじゃないかな。これはねぇ、自分も今時の音楽のジャンルというか呼称というか、新しい用語を詳しく知らないので上手く語れないんだが…、昔の言葉で言うと…

 「デジタルテクノノイズダブパンク」

 う〜ん(笑)。いやぁ、アジテーションが凄くて、それがギターの歪みとかじゃなくてリズムの歪みとビートで迫ってくるっつうか、空間のノイズっつうのか…、歌自体は全然叫んでるとかじゃなくて淡々としているんだけど、出来上がってくる音自体が攻撃的なパンクサウンド。速いリズムとか思いリズムとかじゃないんだよ、これ。でも圧倒的に最先端の攻撃的な音楽。どういう思想でどういう音作りだとこういうのが作れて、しかもそのような音が出せるんだろうか?チームが一体となっていないと出せないだろうなと思うし、そもそも最先端だから事例なしに創り上げていかないといけないんじゃないだろうか?まぁ、その辺は疎いから事例があるのかもしれないけどさ。

 うん、絶対に売れないサウンド。そして攻撃性な印象は実は歌詞にももの凄く反映されていて、今の時代でも英国と世界の政治や体制についてメッセージを発信し続けている貴重な存在。U2とはまるで違う表現で、もっと攻撃的だけど、そういう思想がしっかりしているというか変わっていない。だからこそポップ・グループもカリスマとなったし、マーク・スチュワートも伝説になってしまった。だがしかし、伝説を祭り上げているよりも現在のマーク・スチュワートが出している音とメッセージの方が重要なんじゃないか、とも思う。

Discharge - Hear Nothing, See Nothing, Say Nothing

Hear Nothing, See Nothing, Say Nothing  突然、ハードコアパンクの存在を思い出す。聴きたいとか懐かしいとかいう感情はなくってジューダス・プリースト聴いて、美しい叙情性に感動していたところの反動だろうか。ひたすら攻撃的で破壊的なサウンドをほんの少しだけ思い出して聴いてみようかと。しかし、それでも限度はあるってもんで、そもそも自分のコレクションにあるものとなればヘンなのもそうそうないだろうと…。ん?あ、あったなぁ〜、これ…。全く記憶にないけど凄く辛かったような…、まぁいいや、どれどれ…。

 ディスチャージという英国のハードコアパンクバンドが1982年にリリースした彼等のセカンドアルバム「Hear Nothing, See Nothing, Say Nothing」。何とアルバム全曲で28分を切るという代物だ。うん14曲入りだからほとんど二分弱の曲ばっかりが詰め込まれている。80年代ハードコアパンクバンドとして一世を風靡したバンドで今でも伝説的に語られることの多いバンド。見事に20年以上ぶりに聴いてみたが…、いやぁ〜、全然古くないぞ、これ。アルバム的によく出来ているっていうのか、演奏がヘタじゃないし、創られた音もサウンドも全然耳障りにならないので、単にもの凄いコアな音楽として聴いていられる。

 想像するような滅茶苦茶なサウンドじゃなくってこういうハードコアパンクってのが英国では普通なのだろうかと思えるんだが、なんつうのか…、ジェット音のようなディストーションギターがひたすら2コードくらいで鳴っていて、リズムはもちろんそこそこに早いが、スラッシュとかほどじゃなくって、普通に早い程度。歌はもちろんがなり立てているんだけどヘタじゃないし、アティテュードもしっかり感じられる歌、というか叫びに近いかなぁ…。でもこのアルバム凄くよく出来てる。

 しかし…、やっぱりうるさいし飽きるな(笑)。ちなみにファーストアルバム「WHY」はもう少し派手でぎごちないけどスタンスはしっかり出ている名盤、らしい。覚えていない…(笑)。いやぁ、すっきりするなぁ、結構楽しかった。

G.B.H - City Baby Attacked By Rats

City Baby Attacked By Rats  いやぁ〜、英国ってのはホントに奥が深い。パンク発祥から数年しただけで更に過激なパンクバンドが山のように出てきて、しかも皆が皆自身の主張を持っているという不思議な国。事にハードコアパンクなんてのは誰もが簡単にできるパンクの発展系だと思われることもあって、やたらとヘタクソなバンドから何だかワケのわかんないバンドまでいっぱいあったらしいが、その中で大きく方向を変えていくサイキックTVとかもあったワケだな。まぁ、深みにハマるのならばThis Heatのハードコア性とDischargeのハードコア性の違いをしかと認識すべきではあるが…。

 いやいや、そんな中で、割とメタル色に近いハードコアバンドとして名を馳せてきたG,B,Hというこれもまた英国のバンドで、ルックスは非常にパンクスらしくモヒカンも板に付いているしアタマを立てているのもしっかりと革ジャンにマッチしているのでパンクスからみると非常にかっこよい。しかし音楽性では割とリズム隊がきちんとしているのかDischargeの平坦なノイズに比べるとG.B.Hは結構立てに音が揺れるバンド。なかなか面白い音の組み立てだなぁと。そしてキャッチーさもしっかり持っているので、その辺でも他のバンドとの差別化が図られているみたい。単に聴いてきた音楽の違いだとは思うけど、それでもハードコアファンからは名曲「Sick Boy」とか言われるのだからやはりキャッチーさは必要な要素。

 で、これ、1982年リリースのデビュー作「City Baby Attacked By Rats」で一躍その世界でのヒーローとなったアルバム。全13曲入りでこれもまた激しく楽しめる一枚で、歪んだギターと叫ぶ歌声に立てノリのリズム隊が攻撃的。後のセカンドアルバム「City Baby's Revenge」よりもバンドらしくハードなサウンド。歌詞とかよくわかんないけど、英国のバンドなだけあってこれだけうるさく曲を掻き鳴らしていても脳天気に明るくはなれないという面白さ。不思議だよなぁ。多分音楽的理論を知らないで本能的に創っているから余計にそのまま出来上がってしまうんだろうと思うけど、明るくメジャーな曲ではない。その辺がロックの面白いところで、ハードコアパンクの中でもそんな英国らしさが漂うのを発見してしまう自分。うん、飽きるけど(笑)。

The Exploited - Punk's Not Dead

Punks Not Dead  80年初頭の英国パンク界はもちろんザ・クラッシュの「ロンドン・コーリング」が圧倒的存在感を持っていたと想像するに難くないのだが、どうしてもパンクという音楽のスタイルから新しい方向性を模索していた頃とも云えるワケで、それは他のパンクバンドにしても同じ事で、ジャムはもちろんあの路線だし、ダムドもニューウェイブ化していったことを思えば、既にパンクは死んだ、と叫ばれてもおかしくない。実際Crassというバンドは「Punk Is Dead」と叫んでいたバンドで、反対の意味を叫ぶためにパンクしていた。そしてもう一つ絶対的に声を高々と挙げて「Punk's Not Dead」と叫んでいたバンドがThe Exploitedだ。

 1981年リリースのデビューアルバムが「Punks Not Dead」と題されており、その髪形をモチーフとしたイメージがバンドのアイコンとなり、パンクを代表するバンドとして若者にはウケた。今の時代ならばYouTubeで簡単にどんな格好をしていてどんなスタイルでどんなバンドなのかが確認できるので、それほどの神秘感はないんだろうけど、当時からしてみるとイメージしか先行していなくて果たしてどんだけコワい兄ちゃん達のバンドなんだろう、と訝しんでいたものだ。そして今、多分ブログ書いてなかったら気にすることもなく、また聴くこともなかったであろうバンドなんだけど、つい昔気にしていて全くレコードとか手に入れられなくて自分的には幻のバンドになっていたので良い機会だということで聴いてみました。

 へぇ〜、意外とストレートな70年代パンクに近いサウンドじゃないか。シャープでソリッドで短い曲の中で言いたいことをシンプルに歌ってオシマイ、みたいな感じ。簡単に言えば初期ボウイみたいなもんだ(笑)。いやぁ、時代を考えれば日本のパンクバンドの方が進んでいたのかもしれないなぁ。まぁ、それはともかく、割とテクニックもあって、バンドの音もしっかりしている感じ。そしてホントにストレートなパンクスタイルの曲が15曲並ぶんだけどトータル時間は35分程度というのもパンクならではのアルバム。なかなかかっこよいじゃないか、と若い時に聴かなかったことをちと後悔。

 この辺からOiパンクへと進化していくのとハードコアパンクへと分かれていくバンドと出来たんだろうなぁ。なかなかパンクも既に歴史が長くなってきたので変化と進化が面白いかもね。

This Heat - This Heat

This Heat  アヴァンギャルドサウンドってのはもの凄くマニアックな世界でどんな評論を見ても滅茶苦茶かっこよく「名盤」とか「世紀の傑作」とか書かれていて購買意欲をそそるんだよね。しかもそれが全然手に入らなかったりするから余計に聴いてみたくなるし。で、多くのモノを無理して入手するんだけど結局アヴァンギャルドな音だからさ、何回も聴けないワケで、正直それがかっこいいもの、かどうかもわからないんだけど探して苦労して手に入れたという思いの方が強いから「名盤」ということにして持っていることに満足する傾向にあるアルバムが多い(笑)。

 This Heat。このバンドもそんな類のひとつでアルバムは割と早めに入手したものの音を聴いて決してピンと来たバンドではないな。電子音のノイズから始まっていきなり二曲目、しかもよくわからん攻撃的というのか呪術的というのかアクの強いサウンドで迫ってくるもので始めて聴いた時はワケ分からなかったな(笑)。…とは言えども、だ、プログレやらなんやらと聴いていき、カンタベリーサウンドにも親しんでからその先を漁ろうとするとこのバンドの名前が出てくるんだよ。簡単に言えばケヴィン・エアーズとディス・ヒートは繋がってしまうという英国ロックの恐ろしい構図なワケ。キーポイントはドラムのチャールズ・ヘイワーズ。元Quiet Sun、即ちロキシー・ミュージックのフィル・マンザネラのセッションバンド、みたいなもんだけどかなり傑作というのかこれに近いような即興的ジャズ的アヴァンギャルド的要素を含んだアルバム「Quiet Sun」を一枚リリースしている。で、このバンドにはビル・マコーミックっつう元マッチング・モウルの人も参加しているワケさ。ね、繋がったでしょ(笑)。

 しかしこのディス・ヒートっつうのはいいアルバムだったんだろうか?一握りの人間にとっては相当な衝撃を与えたバンドであることは間違いない。俗に言われる言葉に「King CrimsonとSex Pistolsの間を埋めたバンド」として称されることがあるように言い得て妙な部分があってさ。ノイズ+混沌、そして攻撃性…、うん。悪くはない。が、一般的な音楽をいうのとは大きく異なる衝撃だということは書いておいた方がいいかな。